転職したらどう変わるんだろうか?
『転職活動で一向に内定が貰えません…』(32歳・男性)
<相談者の悩み>
こんにちは。SI企業に勤務している32歳の男です。入社当時はフィールド系のSEとして顧客先中心の業務を担当していましたが、3年前から事業企画系の部署にて、一応マーケティングに関する業務に携わっています。
昨年から転職を志し、色々と活動中です。理由としては、三十路に入ったこともあり、このあたりでより上の会社にキャリアアップしたいというのが理由です。今は求人数自体も多いですし。実際、私の周囲でも、この機に大手への転職に成功する人間が何人もいます。
ただ、すでに4社ほど選考を受けてはいるのですが、どうしても内定までたどり着けないでいます。書類選考自体は問題なく通るのですが、面接でどうしても空回りしてしまう感覚があるのです。
率直に言って、自分の能力にはそれなりに自信もあり、転職に成功した人たちを見ても、どうしても自分に問題があるようには思えないのです。
そこで、中途採用における面接のツボのようなものを、アドバイスいただきたいと思っています。
<城繁幸氏の診断>
診断:『器用貧乏な人は落とされる』
新卒採用とキャリア採用の違いとはなんでしょうか?
「年齢が違う」と書くと、「ふざけてんのか」と言われそうですが、これはあながち的外れでもないんですね。まだ若くキャリアの無い新卒(及び第二新卒)は、主にポテンシャル面で評価されますが、一定のキャリアを持つ中途採用応募者は、こなしてきたキャリアを中心に評価されるわけです。
これを面接する側から具体的に見ていきましょう。まずは新卒の場合。
「あなたはどういう学生生活を送ってきましたか?」
「どういう夢がありますか?」
この手の質問は、相手がどういった能力を持ちえるかを推し量るための取っ掛かりみたいなものですね。当然、学生もあの手この手のエピソードや魅力的な活動をベースに、面接官の心に引っかかるような話を展開するわけです。当然、話の範囲はとても幅広いものとなります。
一方、これがキャリア採用の場合。
「あなたの職歴を教えてください」
「これまで担当したプロジェクトでの成果は?」
なんて具合に、新卒と比べると実に具体的かつ狭い話に終始するはずです。求めるものが具体的なので、これは当然でしょう。
近年は新卒採用においても、職種別採用等、かなり絞り込んだ採用が行われるようになってはいますが、それでも依然として、両者の選考スタイルには彼我の差があるのが現実です。
一般的に、優秀なのになかなか転職に成功しない人には、このスタンスの違いに上手く対応できていない人が多いですね。具体的に言うと、面接で常に「あれもできます、これなんかもやれそうです」と、キャリアの幅広さばかりをアピールする傾向があるのです。
採る方としては、そういう人の面接をすると「結局、この人は何がやりたいんだろう」と不安になるものです。
処方箋:『必要とされるのはプロフェッショナル』
『七人の侍』という映画があります。世界の黒澤こと、黒澤明監督の代表作ですね。
映画の序盤に、街で行き交う浪人たちをスカウトするシーンがあります。浪人たちは皆、剣や飛び道具、兵法など、何か一芸に秀でた曲者揃い。あくは強そうですが、ここ一番で頼りになりそうな連中ばかりです。もしその時、「拙者は槍も剣も鉄砲も人並にはやれますよ」という人がいたらどうでしょう。少なくとも予算に上限がある場合、積極的にはスカウトされないはずです。どんなに多芸でも、体は一つしかないのですから。キャリア採用も同じことですね。
まずは、貴殿がどういうキャリアを構築したいのかをよく整理し、その上で希望する業務やプロジェクトについて、率直に語ってみてください。おそらく、これまでの面接では、新卒採用の時と同じ感覚で、自己の幅広さを中心にピーアールされていたはずです。その部分をチェックし、それに応じて職務履歴の書き方も工夫することで、問題は解決されるでしょう。
転職においては、あくまで企業も個人も対等だと考えて面接に臨んでください。それがプロフェッショナルへの第一歩です。
<相談者の悩み>
こんにちは。SI企業に勤務している32歳の男です。入社当時はフィールド系のSEとして顧客先中心の業務を担当していましたが、3年前から事業企画系の部署にて、一応マーケティングに関する業務に携わっています。
昨年から転職を志し、色々と活動中です。理由としては、三十路に入ったこともあり、このあたりでより上の会社にキャリアアップしたいというのが理由です。今は求人数自体も多いですし。実際、私の周囲でも、この機に大手への転職に成功する人間が何人もいます。
ただ、すでに4社ほど選考を受けてはいるのですが、どうしても内定までたどり着けないでいます。書類選考自体は問題なく通るのですが、面接でどうしても空回りしてしまう感覚があるのです。
率直に言って、自分の能力にはそれなりに自信もあり、転職に成功した人たちを見ても、どうしても自分に問題があるようには思えないのです。
そこで、中途採用における面接のツボのようなものを、アドバイスいただきたいと思っています。
<城繁幸氏の診断>
診断:『器用貧乏な人は落とされる』
新卒採用とキャリア採用の違いとはなんでしょうか?
「年齢が違う」と書くと、「ふざけてんのか」と言われそうですが、これはあながち的外れでもないんですね。まだ若くキャリアの無い新卒(及び第二新卒)は、主にポテンシャル面で評価されますが、一定のキャリアを持つ中途採用応募者は、こなしてきたキャリアを中心に評価されるわけです。
これを面接する側から具体的に見ていきましょう。まずは新卒の場合。
「あなたはどういう学生生活を送ってきましたか?」
「どういう夢がありますか?」
この手の質問は、相手がどういった能力を持ちえるかを推し量るための取っ掛かりみたいなものですね。当然、学生もあの手この手のエピソードや魅力的な活動をベースに、面接官の心に引っかかるような話を展開するわけです。当然、話の範囲はとても幅広いものとなります。
一方、これがキャリア採用の場合。
「あなたの職歴を教えてください」
「これまで担当したプロジェクトでの成果は?」
なんて具合に、新卒と比べると実に具体的かつ狭い話に終始するはずです。求めるものが具体的なので、これは当然でしょう。
近年は新卒採用においても、職種別採用等、かなり絞り込んだ採用が行われるようになってはいますが、それでも依然として、両者の選考スタイルには彼我の差があるのが現実です。
一般的に、優秀なのになかなか転職に成功しない人には、このスタンスの違いに上手く対応できていない人が多いですね。具体的に言うと、面接で常に「あれもできます、これなんかもやれそうです」と、キャリアの幅広さばかりをアピールする傾向があるのです。
採る方としては、そういう人の面接をすると「結局、この人は何がやりたいんだろう」と不安になるものです。
処方箋:『必要とされるのはプロフェッショナル』
『七人の侍』という映画があります。世界の黒澤こと、黒澤明監督の代表作ですね。
映画の序盤に、街で行き交う浪人たちをスカウトするシーンがあります。浪人たちは皆、剣や飛び道具、兵法など、何か一芸に秀でた曲者揃い。あくは強そうですが、ここ一番で頼りになりそうな連中ばかりです。もしその時、「拙者は槍も剣も鉄砲も人並にはやれますよ」という人がいたらどうでしょう。少なくとも予算に上限がある場合、積極的にはスカウトされないはずです。どんなに多芸でも、体は一つしかないのですから。キャリア採用も同じことですね。
まずは、貴殿がどういうキャリアを構築したいのかをよく整理し、その上で希望する業務やプロジェクトについて、率直に語ってみてください。おそらく、これまでの面接では、新卒採用の時と同じ感覚で、自己の幅広さを中心にピーアールされていたはずです。その部分をチェックし、それに応じて職務履歴の書き方も工夫することで、問題は解決されるでしょう。
転職においては、あくまで企業も個人も対等だと考えて面接に臨んでください。それがプロフェッショナルへの第一歩です。
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最終面接のそのひと言が命取り
IT エンジニアの世界でも、中途採用を積極的に行う企業が増え、以前に比べて転職が容易になっている。その一方で転職した後に、「転職に失敗した」といって人材紹介会社に駆け込むITエンジニアが急増中だ。失敗しないためにできることは何か。パソナキャリアの人材コンサルタントがそんな疑問に答えよう。
プロジェクトでは、さまざまなリスクを想定して行動すると思います。転職も同じです。転職をするまでも、さまざまなリスクが顕在化する可能性があります。
しかし、失敗を気にしすぎて、本来の転職すべきタイミングを逃してしまう人もいらっしゃいます。今回は、転職をやっと決意したものの、転職をあきらめることになったMさんの例をご紹介します。
■ほぼ内定の最終面接が、あるひと言で台無しに
転職活動は、意外と体力的にも精神的にもパワーを必要とされるものです。
求人企業の求人を確認することから始まり、職務経歴書・履歴書を作成して企業に提出。場合によっては数週間以上も書類選考の結果を待ち、合否の知らせをもらいます。仕事をしながら転職活動をする場合は、残っている有給休暇や仕事の状況を気にしながら面接の日程を調整することもあるでしょう。せっかく意気込んで休暇を取ったのに、そんなときに限って不合格の連絡が……。気を取り直してほかの企業の面接に臨み、そしてやっと最終面接へ……。
最終面接は、選考の意味合いがほとんどない企業があります。そうした企業では、通常給与をはじめとする勤務条件の提示を行うのです。しかし、企業は内定を出すつもりだったのに、最終面接の場で転職希望者があるひと言を口にしたために、不合格になった例もあるのです。
ほぼ合格のはずだったのに、不合格になってしまったひと言」とは何でしょうか? その言葉を中心にある事例を紹介します。
■スキルもリーダー経験も十分だったのに
最初に紹介するのは、国内大手システムインテグレータ(SIer)で不合格になったMさん(28歳)の例です。Mさんは、国内の中堅SIerで、通信系の企業向けのソリューションの提案・開発を担当していました。
さらに大規模なプロジェクトを担当したいという気持ちとともに、年収アップも狙って転職活動を始めました。上流工程やリーダー経験もあるMさん。お会いした印象は活発な感じで、スキルも経験も十分ですし、コミュニケーション能力も高く、大手SIerへの転職も十分可能だと判断しました。そして、その転職を実現すべく、書類を数社の大手SIerに提出したのです。
Mさんの選考は、予想どおり順調に進みました。応募した5 社のうち、何社かから内定の提示を受けました。さらに、第1希望であるC社も最終面接に進みました。最終面接の内容は、執行役員との面接でした。ほとんどの方が通過する儀礼的な面接だということは、事前に人事の方から伺っていたので、Mさんにリラックスして臨むよう伝えました。
緊張しながらも、Mさんは執行役員の質問に答えていくうち、ある程度の手ごたえを感じました。そのときMさんが何気なく尋ねたのが、
「ところで、年収はどのくらいいただけるのでしょうか?」
という質問だったのです。その回答はありませんでした。その後いくつかのやりとりをして面接は終了しました。
数日後、C社の人事の方より連絡がありました。「残念ながら、Mさんの採用は見送りとなりました。理由としては、最終的に報酬などにこだわる受け身な姿勢が気にかかったからとのことです。『いくらもらえるか』というような質問もされたそうで……」
Mさんは年収にこだわっているわけではないことを、コンサルタントより人事に説明してもらいましたが、一度決定された不採用は変わらず、結局MさんはC社をあきらめたのです。
■いつものプレゼンどおり、順調に話を進めたが
Kさん(34歳)は、事業企画関係のキャリアを積んだ方です。ITエンジニアとしての経験をバックボーンに、インターネットサービスのビジネス企画・プロジェクトを推進する経験を積んできました。今回転職するとしたら3回目になります。
さらなるキャリアアップを目指すKさんが狙うのは、インターネット系の企業P社の事業企画マネージャのポジションです。P社の人事の方によると、将来的には部門のマネジメントなどを担うことが期待されているとのことでした。
P 社の最初の面接は、現場のITエンジニアとの面接でした。Kさんと同年齢ぐらいの方と若手の方が同席し、これからのアイデアを互いに出し合い、面接はかなり盛り上がりました。もちろん、その面接では合格です。面接官をした方からは、「ぜひ合格してください。応援しています」という言葉ももらったそうです。 2次面接の人事・役員面接もスムーズに進み、残すは最終面接だけとなりました。
最終面接は、一度面接した役員を含めた複数の役員との面接です。いままでのキャリアに関する説明やこれからのビジネスに関する提案などを行いました。さまざまな企業への提案に慣れたMさんの話は、周囲を引きつけました。役員とのやりとりの話も盛り上がります。そんなとき、Kさんの口から出てしまった言葉が、
「御社の問題は、○○ですね」
何となく、面接の場の雰囲気が変わったのに、Kさんも気付いたそうです。ざっくばらんな雰囲気で企業へ提案していたいつもの癖が出てしまった、と後悔しても始まりません。何とか、その場はフォローしたものの、Kさんはこの面接が失敗だと分かりました。そしてKさんの感触どおり、数日後P社から不採用の通知が届きました。
■最終面接はあくまで面接
MさんもKさんも、ほとんどの方が合格するはずの最終面接で不採用となってしまいました。その理由は、共通です。最終面接は選考であることを忘れてしまっていた、ということです。
M さんの場合は、条件の交渉を行うべきタイミングではないのに、焦って年収の話をしてしまったのが失敗のもとでした。本来であれば、最終面接の後に、私たちコンサルタントからほかの企業での内定の提示状況を人事担当にお話するなどして、年収アップの交渉は可能だったのです。
Kさんの場合は、あまりに面接でフランクになりすぎたため、まだ入社する前に企業の批判を行ってしまったことが原因でした。中途採用で入社するからには、まずはその会社のやり方などを知ってから、改善に関する発言を行う、という意識が抜けていたのかもしれません。
最終面接は、条件を確認して社長と握手をするだけ、という企業もあります。しかし、たとえいままでの実績では最終面接で不採用になった人がいない企業でも、採用通知書を手にするまでは、不採用になる可能性があるのです。
最終面接となると、長い転職活動も終わりが見えてきて、気が抜けてしまう方もいらっしゃるでしょう。しかし、最終面接でのひと言によって、いままでの転職活動が水泡に帰してしまうこともあることを忘れずに、転職活動を進めていただければと思います。
IT エンジニアの世界でも、中途採用を積極的に行う企業が増え、以前に比べて転職が容易になっている。その一方で転職した後に、「転職に失敗した」といって人材紹介会社に駆け込むITエンジニアが急増中だ。失敗しないためにできることは何か。パソナキャリアの人材コンサルタントがそんな疑問に答えよう。
プロジェクトでは、さまざまなリスクを想定して行動すると思います。転職も同じです。転職をするまでも、さまざまなリスクが顕在化する可能性があります。
しかし、失敗を気にしすぎて、本来の転職すべきタイミングを逃してしまう人もいらっしゃいます。今回は、転職をやっと決意したものの、転職をあきらめることになったMさんの例をご紹介します。
■ほぼ内定の最終面接が、あるひと言で台無しに
転職活動は、意外と体力的にも精神的にもパワーを必要とされるものです。
求人企業の求人を確認することから始まり、職務経歴書・履歴書を作成して企業に提出。場合によっては数週間以上も書類選考の結果を待ち、合否の知らせをもらいます。仕事をしながら転職活動をする場合は、残っている有給休暇や仕事の状況を気にしながら面接の日程を調整することもあるでしょう。せっかく意気込んで休暇を取ったのに、そんなときに限って不合格の連絡が……。気を取り直してほかの企業の面接に臨み、そしてやっと最終面接へ……。
最終面接は、選考の意味合いがほとんどない企業があります。そうした企業では、通常給与をはじめとする勤務条件の提示を行うのです。しかし、企業は内定を出すつもりだったのに、最終面接の場で転職希望者があるひと言を口にしたために、不合格になった例もあるのです。
ほぼ合格のはずだったのに、不合格になってしまったひと言」とは何でしょうか? その言葉を中心にある事例を紹介します。
■スキルもリーダー経験も十分だったのに
最初に紹介するのは、国内大手システムインテグレータ(SIer)で不合格になったMさん(28歳)の例です。Mさんは、国内の中堅SIerで、通信系の企業向けのソリューションの提案・開発を担当していました。
さらに大規模なプロジェクトを担当したいという気持ちとともに、年収アップも狙って転職活動を始めました。上流工程やリーダー経験もあるMさん。お会いした印象は活発な感じで、スキルも経験も十分ですし、コミュニケーション能力も高く、大手SIerへの転職も十分可能だと判断しました。そして、その転職を実現すべく、書類を数社の大手SIerに提出したのです。
Mさんの選考は、予想どおり順調に進みました。応募した5 社のうち、何社かから内定の提示を受けました。さらに、第1希望であるC社も最終面接に進みました。最終面接の内容は、執行役員との面接でした。ほとんどの方が通過する儀礼的な面接だということは、事前に人事の方から伺っていたので、Mさんにリラックスして臨むよう伝えました。
緊張しながらも、Mさんは執行役員の質問に答えていくうち、ある程度の手ごたえを感じました。そのときMさんが何気なく尋ねたのが、
「ところで、年収はどのくらいいただけるのでしょうか?」
という質問だったのです。その回答はありませんでした。その後いくつかのやりとりをして面接は終了しました。
数日後、C社の人事の方より連絡がありました。「残念ながら、Mさんの採用は見送りとなりました。理由としては、最終的に報酬などにこだわる受け身な姿勢が気にかかったからとのことです。『いくらもらえるか』というような質問もされたそうで……」
Mさんは年収にこだわっているわけではないことを、コンサルタントより人事に説明してもらいましたが、一度決定された不採用は変わらず、結局MさんはC社をあきらめたのです。
■いつものプレゼンどおり、順調に話を進めたが
Kさん(34歳)は、事業企画関係のキャリアを積んだ方です。ITエンジニアとしての経験をバックボーンに、インターネットサービスのビジネス企画・プロジェクトを推進する経験を積んできました。今回転職するとしたら3回目になります。
さらなるキャリアアップを目指すKさんが狙うのは、インターネット系の企業P社の事業企画マネージャのポジションです。P社の人事の方によると、将来的には部門のマネジメントなどを担うことが期待されているとのことでした。
P 社の最初の面接は、現場のITエンジニアとの面接でした。Kさんと同年齢ぐらいの方と若手の方が同席し、これからのアイデアを互いに出し合い、面接はかなり盛り上がりました。もちろん、その面接では合格です。面接官をした方からは、「ぜひ合格してください。応援しています」という言葉ももらったそうです。 2次面接の人事・役員面接もスムーズに進み、残すは最終面接だけとなりました。
最終面接は、一度面接した役員を含めた複数の役員との面接です。いままでのキャリアに関する説明やこれからのビジネスに関する提案などを行いました。さまざまな企業への提案に慣れたMさんの話は、周囲を引きつけました。役員とのやりとりの話も盛り上がります。そんなとき、Kさんの口から出てしまった言葉が、
「御社の問題は、○○ですね」
何となく、面接の場の雰囲気が変わったのに、Kさんも気付いたそうです。ざっくばらんな雰囲気で企業へ提案していたいつもの癖が出てしまった、と後悔しても始まりません。何とか、その場はフォローしたものの、Kさんはこの面接が失敗だと分かりました。そしてKさんの感触どおり、数日後P社から不採用の通知が届きました。
■最終面接はあくまで面接
MさんもKさんも、ほとんどの方が合格するはずの最終面接で不採用となってしまいました。その理由は、共通です。最終面接は選考であることを忘れてしまっていた、ということです。
M さんの場合は、条件の交渉を行うべきタイミングではないのに、焦って年収の話をしてしまったのが失敗のもとでした。本来であれば、最終面接の後に、私たちコンサルタントからほかの企業での内定の提示状況を人事担当にお話するなどして、年収アップの交渉は可能だったのです。
Kさんの場合は、あまりに面接でフランクになりすぎたため、まだ入社する前に企業の批判を行ってしまったことが原因でした。中途採用で入社するからには、まずはその会社のやり方などを知ってから、改善に関する発言を行う、という意識が抜けていたのかもしれません。
最終面接は、条件を確認して社長と握手をするだけ、という企業もあります。しかし、たとえいままでの実績では最終面接で不採用になった人がいない企業でも、採用通知書を手にするまでは、不採用になる可能性があるのです。
最終面接となると、長い転職活動も終わりが見えてきて、気が抜けてしまう方もいらっしゃるでしょう。しかし、最終面接でのひと言によって、いままでの転職活動が水泡に帰してしまうこともあることを忘れずに、転職活動を進めていただければと思います。
「強い個人」の「一身上の都合」
コンサルタントにとって担当プロジェクトが変わることは転職の疑似体験をしているようなものです。だから本当の転職をするときは余計に感傷的になるように思います。
転職とはとても慎重な「決断」で、しかも重要な「人生の節目」です。
以前のエントリでも書いたように、転職とは、ポジティブにやるべきであり、ネガティブにやってもいいことない、と小職は信じています。
ただ、現実、ビジネスマン・ビジネスウーマンとして活躍する多くの人達の中には、もっと複雑な事情の絡み合いの中で、「転職」する人もいます。
どんな「強い個人」であっても、辞めるときに切り出す単語。
「一身上の都合」
それは、この本を読むと、すごい感動的、衝撃的な背景に、たった6文字の言葉に続く退職(転職)へのストーリーがあちこちに存在することがわかる。
正直、今までITメディアさんからいただいた中で、一番感動的だった本です(自分的に)。
どんなに頑張っても、気遣っても、我慢しても、報われない「とき」がある。
でも、ほんとに頑張って、気遣って、我慢した人には、必ず報われる「とき」もきます。
「会社を辞めよう」「転職しよう」と何度か考える人は結構多いと思いますし、私も思いついた回数は両手どころの数ではありません。
実際一度しか転職していませんが、何度も悩み、すごい時間もかけ、検討に検討を重ね、ついに12年半いた前職を辞め、現職に就き。
あんまりリスペクトされているとも思っておらず、オフィシャルなフェアウェル(送別会)もなく、ひっそり辞めていく覚悟でしたが、幸運にも、結構数の方が送別会の場を設けてくださり、とても嬉しかったのを記憶しています。
意外に狭いこの世の中。
みんな、すごーく悩みに悩み、考え抜いて退職・転職していく。
丁寧に進めている人、イコール、日頃の仕事でも丁寧な姿勢で明確に意志ももって進めてきた「強い個人」には、会社を去っても強い人的ネットワークが残ってくれます。
コンサルタントにとって担当プロジェクトが変わることは転職の疑似体験をしているようなものです。だから本当の転職をするときは余計に感傷的になるように思います。
転職とはとても慎重な「決断」で、しかも重要な「人生の節目」です。
以前のエントリでも書いたように、転職とは、ポジティブにやるべきであり、ネガティブにやってもいいことない、と小職は信じています。
ただ、現実、ビジネスマン・ビジネスウーマンとして活躍する多くの人達の中には、もっと複雑な事情の絡み合いの中で、「転職」する人もいます。
どんな「強い個人」であっても、辞めるときに切り出す単語。
「一身上の都合」
それは、この本を読むと、すごい感動的、衝撃的な背景に、たった6文字の言葉に続く退職(転職)へのストーリーがあちこちに存在することがわかる。
正直、今までITメディアさんからいただいた中で、一番感動的だった本です(自分的に)。
どんなに頑張っても、気遣っても、我慢しても、報われない「とき」がある。
でも、ほんとに頑張って、気遣って、我慢した人には、必ず報われる「とき」もきます。
「会社を辞めよう」「転職しよう」と何度か考える人は結構多いと思いますし、私も思いついた回数は両手どころの数ではありません。
実際一度しか転職していませんが、何度も悩み、すごい時間もかけ、検討に検討を重ね、ついに12年半いた前職を辞め、現職に就き。
あんまりリスペクトされているとも思っておらず、オフィシャルなフェアウェル(送別会)もなく、ひっそり辞めていく覚悟でしたが、幸運にも、結構数の方が送別会の場を設けてくださり、とても嬉しかったのを記憶しています。
意外に狭いこの世の中。
みんな、すごーく悩みに悩み、考え抜いて退職・転職していく。
丁寧に進めている人、イコール、日頃の仕事でも丁寧な姿勢で明確に意志ももって進めてきた「強い個人」には、会社を去っても強い人的ネットワークが残ってくれます。
システムの一部しか見えない環境にいたくない
ITエンジニアは、どのような理由で転職を考えるのか。いくつかの事例から、転職者それぞれの課題と解決のプロセスを紹介する。似たような状況に陥ったときの参考になるだろう。
ITエンジニアが転職を考えた動機、抱えていた課題とそれを解決したプロセスを紹介する本連載。今回は企業の社内情報システム部門、いわゆる社内SEに関する話題を取り上げます。
私がお会いする転職者には、社内SEを希望する人が多くいます。でもその理由は人それぞれ。そして、企業の情報システム部門の仕事を本当に理解して希望している人ばかりとはいえません。
「なぜ転職するのか」という理由は、転職活動の本質ともいえる重要なもので、ここをはっきりとらえていないと大失敗をしてしまいます。転職理由の大切さを伝えてくれる一例を紹介しましょう。
■松田さんからの久しぶりの電話
松田さん(仮名)から電話をもらうのは1年ぶりでした。彼は以前私がサポートをし、中堅システム開発(SI)会社から専門商社の情報システム部門に転職したITエンジニアでした。
「久しぶりですね、お元気ですか、松田さん。その後、お仕事は順調ですか?」。そう語りかけると、松田さんの口からは意外な言葉が飛び出しました。「実はその件でお電話したんです。紹介してもらっておいていいにくいのですが、また転職を考えているんです」
私は驚きました。「えっ、本当ですか!あんなに喜んでらっしゃったのに……。それにまだ1年ですし……」。多くの人の転職を支援する中でも、特に採用内定を獲得したときの喜びようが印象的な人でした。あれほど幸せそうに転職していったのに、いったいなぜ、こんなに早く転職を考えるようになったのでしょう。私はさっそく松田さんと会うことにしました。
■仕事の内容が変わった
久しぶりに会う松田さんはどこか気まずそうで、そして少し元気がないようでした。再び転職を考えているわけを尋ねると、松田さんは重い口を開いてくれました。
「実は、3カ月前から仕事の内容ががらっと変わったんです。入社からそれまでは、営業支援システムや契約管理、物流システムなどの基幹システムの刷新プロジェクトにかかわり、とてもやりがいのある毎日だったんです……」
松田さんが転職を考えている理由は、現在の仕事の内容に関するものでした。
松田さんが現在在籍する会社では、以前からホストコンピュータで構成されていた基幹システムの全面刷新が進んでいました。1年前に転職した松田さんも、このプロジェクトに参画する予定で入社したのです。
入社後、予定どおり基幹システムの刷新プロジェクトに配属された松田さんは、一生懸命に仕事に打ち込みました。社内SEとして働くのは初めてで慣れないことも多く、仕事はハードでしたが、とても充実していると感じていたそうです。
そしてシステムは完成し、リリースされました。それが3カ月前のことだったのです。
■システムは使うために作るもの
システムが完成すれば、仕事内容も開発フェイズから運用フェイズに移行します。社内SEの重要な仕事の1つがこの運用フェイズ、要するにシステムを使用していくことなのです。
情報システムのエンドユーザーには、それぞれ会社が属する業界の仕事があります。当たり前ですがそれが本業で、情報システムは本業を全うするための手段の 1つにすぎません。生産工程やそのほかの業務の効率化、競合他社との差別化など目的はさまざまですが、情報システムの構築自体が目的になることはありません。
システムの運用の過程で、機能追加や細かい変更などの開発が発生することはありますが、ゼロベースで情報システムを企画開発することはまれであるといってよいでしょう。
加えて社内SEの仕事には、PCやソフトウェアのライセンスなどの在庫管理や社員のヘルプデスク業務、情報システムの調達やプロジェクト管理に関するさまざまな事務処理などもあります。
社内SEを希望するのなら、こういった社内SEの業務内容を十分認識したうえで応募すべきであり、松田さんにはその点が欠けていたといえます。
松田さんは入社前、上司となる情報システム部の部門長と念入りに打ち合わせをしたはずでした。でも希望の職種に転職できるという喜びのあまり、転職することのリスクを少なく見積もってしまったとのことでした。
■松田さんが転職に求めていたものは
再転職を望む松田さんがここで確認しなければならないこと、それは社内SEを希望したそもそもの理由です。私は松田さんに問い掛けました。
山口(筆者) 松田さん、社内SEを希望されていた理由をもう一度思い出してくださいますか。
松田 はい、社内SEを希望した理由ですか……。情報システム全体を俯瞰(ふかん)したかったからです。前職では部分的にしか見えなかったもので。
山口 そういった意味では、いまのポジションはユーザー側ですから、全体を把握しやすいのではないですか。
松田 はい、そのとおりですが、運用となるとあまりやりがいが持てないんです。しかも技術からは遠ざかって事務的な仕事が増えましたし……。
山口 そうすると社内SEに限定して転職をする必要はないのではないでしょうか。
松田 えっ、またシステム開発の会社に?
私は前述のような社内SEの仕事内容について説明し、松田さんにきちんと理解してもらいました。そのうえであらためて、「情報システム導入の全体を俯瞰できる仕事」という意味でSI企業への転職を提案しました。
山口 松田さんが希望されている仕事は、社内情報システム部門でないと実現できないものではないと思います。情報システムの企画開発に一段高いポジションでかかわりたい、そういう意味では、運用が多いユーザー側よりSI企業の側に多くチャンスがあるのではないでしょうか。
松田 そうですね、前の会社の仕事は大手企業からの下請けがほとんどで、システムの全体感がつかめなかったし、つかむ必要もなかったように思えます。でも元請けのSI企業ならシステム全体を把握して仕事ができる。ぜひチャレンジしたいです。いまならそう思えますよ!
■1年ぶりの転職活動、そして内定
こうして再び転職活動を始めた松田さんは、大手SI企業数社にアプローチ。転職後わずか1年での再転職で難航するかと思った書類選考は、思いのほか首尾よく進みました。短い期間とはいえユーザー側で仕事をした経験も、とても好意的に受け取られたようでした。そして松田さんは、意中の会社から採用内定を獲得することができたのです。
私は松田さんに、内定をもらった会社のSEマネージャとオファー内容に関する打ち合わせを行うことを勧めました。松田さんのやりたい仕事の内容や将来へのキャリアビジョンなどを伝えることで、入社後のギャップを回避するためです。
企業側は快く対応してくれました。未来の上司は松田さんの話を聞き、会社の事業方針や業務内容、社内でのキャリアパスを考慮したうえで、「ぜひ一緒に頑張りましょう」と温かい言葉をかけてくれたようです。松田さんの心から、転職に関する不安が一掃された瞬間でした。
■転職をする本当の理由をよく考えよう
転職では、最初と最後が肝心です。転職先を決める最後の意思決定が重要であることは、皆さんよく分かっているかと思います。しかし、転職活動を始めるときに「なぜ転職するのか」「何を解決するための転職なのか」をはっきりさせることも、最後の意思決定と同じくらいに重要なのです。
今回紹介した松田さんは、一度の失敗を経て夢をかなえることができました。でも、失敗の中身によっては再起ができない可能性もあります。
転職を思い立ったときこそ冷静に、よく考えて物事の本質を見極めるべきです。間違いのない転職のために、一度人材紹介会社のサービスを利用してみてはいかがでしょう。客観的に転職のテーマを浮き彫りにするお手伝いができると思います。
ITエンジニアは、どのような理由で転職を考えるのか。いくつかの事例から、転職者それぞれの課題と解決のプロセスを紹介する。似たような状況に陥ったときの参考になるだろう。
ITエンジニアが転職を考えた動機、抱えていた課題とそれを解決したプロセスを紹介する本連載。今回は企業の社内情報システム部門、いわゆる社内SEに関する話題を取り上げます。
私がお会いする転職者には、社内SEを希望する人が多くいます。でもその理由は人それぞれ。そして、企業の情報システム部門の仕事を本当に理解して希望している人ばかりとはいえません。
「なぜ転職するのか」という理由は、転職活動の本質ともいえる重要なもので、ここをはっきりとらえていないと大失敗をしてしまいます。転職理由の大切さを伝えてくれる一例を紹介しましょう。
■松田さんからの久しぶりの電話
松田さん(仮名)から電話をもらうのは1年ぶりでした。彼は以前私がサポートをし、中堅システム開発(SI)会社から専門商社の情報システム部門に転職したITエンジニアでした。
「久しぶりですね、お元気ですか、松田さん。その後、お仕事は順調ですか?」。そう語りかけると、松田さんの口からは意外な言葉が飛び出しました。「実はその件でお電話したんです。紹介してもらっておいていいにくいのですが、また転職を考えているんです」
私は驚きました。「えっ、本当ですか!あんなに喜んでらっしゃったのに……。それにまだ1年ですし……」。多くの人の転職を支援する中でも、特に採用内定を獲得したときの喜びようが印象的な人でした。あれほど幸せそうに転職していったのに、いったいなぜ、こんなに早く転職を考えるようになったのでしょう。私はさっそく松田さんと会うことにしました。
■仕事の内容が変わった
久しぶりに会う松田さんはどこか気まずそうで、そして少し元気がないようでした。再び転職を考えているわけを尋ねると、松田さんは重い口を開いてくれました。
「実は、3カ月前から仕事の内容ががらっと変わったんです。入社からそれまでは、営業支援システムや契約管理、物流システムなどの基幹システムの刷新プロジェクトにかかわり、とてもやりがいのある毎日だったんです……」
松田さんが転職を考えている理由は、現在の仕事の内容に関するものでした。
松田さんが現在在籍する会社では、以前からホストコンピュータで構成されていた基幹システムの全面刷新が進んでいました。1年前に転職した松田さんも、このプロジェクトに参画する予定で入社したのです。
入社後、予定どおり基幹システムの刷新プロジェクトに配属された松田さんは、一生懸命に仕事に打ち込みました。社内SEとして働くのは初めてで慣れないことも多く、仕事はハードでしたが、とても充実していると感じていたそうです。
そしてシステムは完成し、リリースされました。それが3カ月前のことだったのです。
■システムは使うために作るもの
システムが完成すれば、仕事内容も開発フェイズから運用フェイズに移行します。社内SEの重要な仕事の1つがこの運用フェイズ、要するにシステムを使用していくことなのです。
情報システムのエンドユーザーには、それぞれ会社が属する業界の仕事があります。当たり前ですがそれが本業で、情報システムは本業を全うするための手段の 1つにすぎません。生産工程やそのほかの業務の効率化、競合他社との差別化など目的はさまざまですが、情報システムの構築自体が目的になることはありません。
システムの運用の過程で、機能追加や細かい変更などの開発が発生することはありますが、ゼロベースで情報システムを企画開発することはまれであるといってよいでしょう。
加えて社内SEの仕事には、PCやソフトウェアのライセンスなどの在庫管理や社員のヘルプデスク業務、情報システムの調達やプロジェクト管理に関するさまざまな事務処理などもあります。
社内SEを希望するのなら、こういった社内SEの業務内容を十分認識したうえで応募すべきであり、松田さんにはその点が欠けていたといえます。
松田さんは入社前、上司となる情報システム部の部門長と念入りに打ち合わせをしたはずでした。でも希望の職種に転職できるという喜びのあまり、転職することのリスクを少なく見積もってしまったとのことでした。
■松田さんが転職に求めていたものは
再転職を望む松田さんがここで確認しなければならないこと、それは社内SEを希望したそもそもの理由です。私は松田さんに問い掛けました。
山口(筆者) 松田さん、社内SEを希望されていた理由をもう一度思い出してくださいますか。
松田 はい、社内SEを希望した理由ですか……。情報システム全体を俯瞰(ふかん)したかったからです。前職では部分的にしか見えなかったもので。
山口 そういった意味では、いまのポジションはユーザー側ですから、全体を把握しやすいのではないですか。
松田 はい、そのとおりですが、運用となるとあまりやりがいが持てないんです。しかも技術からは遠ざかって事務的な仕事が増えましたし……。
山口 そうすると社内SEに限定して転職をする必要はないのではないでしょうか。
松田 えっ、またシステム開発の会社に?
私は前述のような社内SEの仕事内容について説明し、松田さんにきちんと理解してもらいました。そのうえであらためて、「情報システム導入の全体を俯瞰できる仕事」という意味でSI企業への転職を提案しました。
山口 松田さんが希望されている仕事は、社内情報システム部門でないと実現できないものではないと思います。情報システムの企画開発に一段高いポジションでかかわりたい、そういう意味では、運用が多いユーザー側よりSI企業の側に多くチャンスがあるのではないでしょうか。
松田 そうですね、前の会社の仕事は大手企業からの下請けがほとんどで、システムの全体感がつかめなかったし、つかむ必要もなかったように思えます。でも元請けのSI企業ならシステム全体を把握して仕事ができる。ぜひチャレンジしたいです。いまならそう思えますよ!
■1年ぶりの転職活動、そして内定
こうして再び転職活動を始めた松田さんは、大手SI企業数社にアプローチ。転職後わずか1年での再転職で難航するかと思った書類選考は、思いのほか首尾よく進みました。短い期間とはいえユーザー側で仕事をした経験も、とても好意的に受け取られたようでした。そして松田さんは、意中の会社から採用内定を獲得することができたのです。
私は松田さんに、内定をもらった会社のSEマネージャとオファー内容に関する打ち合わせを行うことを勧めました。松田さんのやりたい仕事の内容や将来へのキャリアビジョンなどを伝えることで、入社後のギャップを回避するためです。
企業側は快く対応してくれました。未来の上司は松田さんの話を聞き、会社の事業方針や業務内容、社内でのキャリアパスを考慮したうえで、「ぜひ一緒に頑張りましょう」と温かい言葉をかけてくれたようです。松田さんの心から、転職に関する不安が一掃された瞬間でした。
■転職をする本当の理由をよく考えよう
転職では、最初と最後が肝心です。転職先を決める最後の意思決定が重要であることは、皆さんよく分かっているかと思います。しかし、転職活動を始めるときに「なぜ転職するのか」「何を解決するための転職なのか」をはっきりさせることも、最後の意思決定と同じくらいに重要なのです。
今回紹介した松田さんは、一度の失敗を経て夢をかなえることができました。でも、失敗の中身によっては再起ができない可能性もあります。
転職を思い立ったときこそ冷静に、よく考えて物事の本質を見極めるべきです。間違いのない転職のために、一度人材紹介会社のサービスを利用してみてはいかがでしょう。客観的に転職のテーマを浮き彫りにするお手伝いができると思います。